本や ふるさとマルシェ
いわきの本、民俗など。店主じゃんがら堂です。
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Author:ふるさとマルシェ本や
 ふるさとマルシェ本やの店主じゃんがら堂です。
 じゃんがら堂は、いわきの古本屋です。店舗は無く、駅前のラトブ6Fに事務所を構えております。古本を扱う一方で、民俗学徒として、いわきのじゃんがらを中心に、聞き書きをしております。夜は、たいてい平の呑み屋にいます。
 ふるさとマルシェ本やでは、福島やいわきなどの地域に関する書籍や資料を主に扱っております。このブログでは、じゃんがら堂が、お薦めしたい本や日々思ったことなどを綴りたいと思います。



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『土の味』 和田文夫
土の味 和田文夫は、大正5(1916)年、いわき市四倉町長友に生まれている。家業の農業に従事しながら、昭和10年、柳田民俗学の門戸をたたき、その後、磐城民俗研究会、福島県民俗学会の中心として活動している。

 和田が、野の草や木の実などのエッセイを新聞連載したものを一冊にまとめたのが本書である。くるみ、ははこぐさ、セリ、カタクリ、タラボ、ゴマなど43の山野草を収録している。実際に和田が、採取し、料理し、食し、または、村人に聞いたことが記され、ときに、民俗学的知見が披瀝される。

 和田の文章は、味覚、嗅覚、触覚を刺激する。それは、和田が民俗学という学問の世界よりも、一個の農業者に基礎を置いて紡がれた文章だからだろう。


例えば、「ふくのぢ」から文章を抜き出してみよう。

…土のぬくもりは春なのであろう、枯れ草のなかに“ふくのぢ”(ふきのとう)が、紫がかった褐色の表皮にぬくぬくとくるまって、顔を出しはじめた。枯れ草を分けて、つまんだ指に力を入れてひねると、ポキッと土からもぎとれる。ぷくっとしたやわらかなまるい玉が、ころりと手のひらに転がって“ふくのぢ”の香りが、プーンとくる。

 和田の文章は、「ぬくぬく」「ポキッ」「ぷくっ」「ころり」「プーン」という擬音語を用いるところに特徴がある。ふくのぢを採取した後、和田は水を張ったどんぶりに「ポン」と投げる。そうすると、「ぷくぷく」とふくのぢが浮く。水から出したふくのぢを、「シャキシャキ」と刻み、小皿に取って、しょう油を垂らして、口に入れる。

ほろりと苦味が舌にさわる。ふわっと香りが口いっぱいにひろがる。苦味はトウヤク(せんぶり)のように口に残らない。さらっと消えるが、香りはしばらく口の中に残る。刻まれた一ひらひとひらをつまんで口に入れて、小皿にはやがて花となる小さな粒々が残る。それをも一粒一粒つまんで口に入れる。しばらくは、この粒々からの苦味と香りが口のなかだけでない、あたまのてっぺんまでずうっとのぼる。

 どうだろう。ふくのぢがもたらす春の香りと頭のてっぺんまで上ってゆく苦味を感じられたのではないだろうか。

 ふくのぢ味噌を作るのは、いつも祖父の仕事だったと和田は続ける。囲炉裏の横座で、孫の和田が押さえるすり鉢にふくのぢを入れて、「ごりごり」祖父がする。そこで、和田は、囲炉裏の話を持ち出す。囲炉裏の横座に座るのは家の当主だけで、ほかにはお坊さんと馬鹿者か猫である。猫は、囲炉裏で焼いている魚を狙うものだが、カンのよいもので、家人の注意がそれたところを見計らっている。和田はこんな調子で、回想を続ける。

 祖父の持病は「ぢ」で、ふくのぢは胃の薬とも「ぢ」の薬ともいわれていた。しかし、そのために祖父がふくのぢ味噌を好んだのかはわからない。

 和田の文章は、結論に達しない。和田の記憶と体験を堂々巡りする。読後に残るのは、答えではなく、和田の感じた触感であり、味であり、匂いなのである。

 「土の味」を読み終えれば、不思議なことに、土にも味がある心持ちにさせられるだろう。


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